小栗康平 手記

日曜美術館

2010/05/26

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長谷川燐二郎(りんは火偏ではなく、さんずい)という画家をご存知ですか。1904年に生まれて88年に亡くなられている画家です。私はこれまで名前も聞いたこともなかったのですが、NHKの若いディレクターから声をかけてもらい、平塚市立美術館まで行ってきました。そして、一昨年のハンマースホイのときと同じようないきさつで、よく知りもしないのに、また日曜美術館に出演してしまいました。
 東京新聞で「言いたい放談」という連載のコラムをもっているのですが、下記はその転載です。知ったかぶりをして、一月ほど前に書いたものです。

 事業仕分けで、独立行政法人
の呆れ返った実態が明るみに出
たが、もともとなくてもいいよ
うなところがやり玉にあがった
だけで、「独法」のなにもかも
が悪いわけではない。日本で唯
一の国立映画機関であるフィル
ムセンターは「独立行政法人国
立美術館」が運営する「東京国
立近代美術館」の中にある。や
やこしいが組織的にはそうだ。
このフィルムセンターなどは、
それこそそこだけできちんと「独
立」して、丸が一つも二つも違
う予算をつけてもらわなくては
ならない。この独立行政法人化
と並んで、地方自治体では指定
管理者制度なるものが始まった。
無駄を省け、金を稼げの大合唱
で、全国の文化施設がすっかり
弱気になっている。
そんな中でいい試みがあった。
平塚市美術館で開かれている長
谷川燐二郎の、初めてとなる大
掛かりな回顧展である。画壇な
るところとは関係しないで、独
自な道を歩いた画家である。
 静かで、不思議な絵が多いが、
大きな絵は一枚もない。こうし
た絵が再評価されている背景に
は、たぶん、今という時代がよ
くも悪くも関係しているだろう。
 それはこの企画の立ち上がり
方にも現われている。東京では
なく地方の美術館から仕掛けら
れて、経済的な理由から平塚の
後、下関美術館、北海道立函館
美術館、宮城県美術館へと年内
いっぱい持ちまわる。面白い動
きである。

 見えてあるものと、いかにも平明に向かい合っているようは見えるのですが、そう簡単でもなく、いろいろと面白いです。番組の放送は五月三十日、朝九時からNHK教育テレビです。再放送は六月六日の夜、八時です。

風かおる

2010/05/04

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いい季節になりました。ここに書き込みもないままに、ほぼ半年、過ぎてしまいました。
なにかをきっかけにしなくてはと、ホームページの扉の写真だけ、変えてもらいました。意味のあることでもありませんが。
私の五作品がそれぞれ四回づつ、この五月の「衛星劇場」で放映されます。スケジュールは扉のところに張ってあります。二十七時、というのは深夜の三時、ということなのでしょうね。HDで出されますので、画質はこれまでよりもいいものになっているはずです。「日本映画監督列伝」は、キネマ旬報の元編集長、植草信和さんが私をインタビューしてくれたものです。
またときどきは、書いていけるように、こころがけていきます。

邑の映画会

2009/10/09

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昨年の十月、ここで紹介した「邑(むら)の映画会」が今年もまた、開かれます。一回だけで終わらせないぞと、関係されたみなさんが、一生懸命です。子どもボランティアというのも、ここのユニークなところ。アニメーションのよろこび、たのしみが、今年の三つの作品ではそれぞれとても特徴的です。「ピロスマニ」は取り組みとして、まだ早い、分かりにくい、などなどいろいろ意見があったようですが、いいものに、早い、遅いはない、ですね。早ければ早いなりに、遅ければ遅いなりに、見方があるでしょう。とにかく、やること、見ること。

邑の映画会 Vol.2 パンフレットPDF:1
邑の映画会 Vol.2 パンフレットPDF:2

変な映画館

2009/10/01

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「シネマバー ザ・グリソム・ギャング」 http://movie007.hp.infoseek.co.jp/
以前にもブログで紹介しましたが、そうとうに変な映画館です。三十五ミリのフィルム上映で、二十一席しかない、のです。ここで「眠る男」の上映があり、私も呼ばれていて話をすることになっています。今度の日曜日、四日。なんと私はこれで、四回目。全部の作品をやる、ということになっていて、それが一年に一回。来年は「埋もれ木」。そのあとはどうするのでしょう。もうありません。

ドキュメンタリー

2009/08/17

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私についてのドキュメンタリー映画が作られることになり、昨日まで三日間にわたってその撮影が栃木、群馬で行われました。監督はフランス人のANTOINE BARRAUD(アントン・バロウ)さんで、フランス国立造形美術センター(CNAP)が出資している企画だそうです。カンヌでお世話になっている通訳の高橋晶子が同行してくださり、監督と録音技師とロケマネと四人のクルーでした。
アントンさんは、『埋もれ木』をパリの映画館で見てくれたのだそうです。たぶんそれまで私のことは知らなかったのでしよう。でも『埋もれ木』に魅せられて、なんと五回も見に行ったとおっしゃっていました。そして昨年、トリノで私のレトロスペクティブ上映があることを知り、そこで全作品を見て、どうしても私についてのドキュメンタリーを作りたくなって、とのことでした。ドキュメンタリーとはいっても実験的なそれで、いわゆるインタビューをただまとめる、といったものではなさそうです。これまでにもケネス・アンガーやツァイ・ミンリャン監督のドキュメンタリーを撮っていますが、ドキュメンタリーというよりはアート映画といったほうが近いかもしれません。どんな仕上がりになるのか、楽しみです。
アントンさんから送られてきた企画書ではタイトルは「La foret des songes」で、(foreのeの上に^がついていている)、「夢の森」「夢想の森」となるのでしょうか。「小栗の映画は、いわゆる古典的な物語の文法を使わず、ゆったりと流れる映画の地に身を投じている。作品はいくつものストーリーが折り重なり、見事なまでに絵画的で、見るものを陶酔へと引き込む、夢幻世界がある。それは観客の身体にまで影響し、物語と魂とを感じるための、もう一つの世界ともなっている」といったことが、企画書の冒頭に書かれています。企画書ですので、勝手にその全文をここに載せてしまうわけにはいきませんが、私が自分でも、なるほどなあ、と思ったこともありました。
「死の棘」のラスト近くのシーン、精神病院の中庭をトシオがミホを探しいる場面を、こんなふうに書いてくれています。「「彼はすでに一つの転換を経たのです。妻が失踪し、中庭から反射する池へとさ迷い歩く夜のシーンは、旅の始まりであり、時間の停止でもあります。この作品以降、小栗監督は物語が一直線上にある映画や、主人公を中心とした映画、また時間に整合性がある映画は撮らなくなり、芸術映画、絵画映画、詩の映画へと向かっていきます」とありました。「死の棘」の夜のプールのシーンは、自分でもここから明らかに映画の世界が変わった、少なくても「死の棘」という映画の中では、ここを「神の広場」として、などと、そんなふうにもとらえてもいましたので、少し驚きました。
「夢想と野生の交差、厳密さとアバンギャルドの交差、神秘主義と具象の喜びの交差―」をとらえるためにインタビューする、となっていました。さて、そんなことが答えられたのかどうか、怪しいものではありますが。(ここに引用した企画書は、高橋晶子さんが訳してくれたものです)。
ドキュメンタリーが完成したら、パリで私のレトロスペクティブを実現したい、そうもおっしゃっていました。どんなことになるでしょうか。それまでに次の映画は動いているでしょうか。

 

映画作品

埋もれ木

2005年度作品

眠る男

1996年度作品

死の棘

1990年度作品

伽や子のために

1984年度作品

泥の河

1981年度作品

DVD・書籍

「埋もれ木」DVD

小栗康平監督作品集 DVD-BOX

書籍紹介

小栗康平プロフィール

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