小栗康平 手記

早稲田松竹の過去作品一挙上映と、『FOUJITA』の感想

2015/11/10

早稲田松竹での過去作品一挙上映には、たくさんの人たちにおいでいただいております。
あらためてお礼申し上げます。

新作の『FOUJITA』もいよいよ今週末から封切られます。
幾つかの新聞でも映画批評が載るようになってきました。

下記の文章は、製作者の井上和子さんのもとに寄せられたメールです。
10月26日の東京映画祭での『FOUJITA』上映を見てくださった友人からのもの、とのことです。
私にもうれしい、映画の感想でした。
ご本人の了解を頂いて転載します。

小栗康平

<以下、転載>

今日はありがとうございました。
暦の上の13夜は昨日でしたが、今日の正午の月齢が13.1と新聞に出ていました、ということは、今出ている月は13.5くらいでしょうか。
澄んできれいな月です。映画でお月見の場面を見たそのすぐ後に、同じ13夜に近い月を見ることができたのはラッキーでした。

映画は色々伺って想像していたのとはちょっと違っていました。
たしかに、詩的な場面の連続ですが、でも最後に骨太の圧倒的な印象が残りました。
静かな画面にあれだけの表現力を盛り込むというのは凄いと思います。筋立てで見せる作品ではないので、知識で補ったり、想像したりする部分があって、かえって世界が膨らむ、という面もありました。見終わってことばがなかったのは、映画が凄かった証拠です。

見終わったとき、空気としては「反戦」を感じましたが、考えてみればそれだけではなく、人間の愚かさ、弱さ、強さ、美しさなど、相反するさまざまな世界がすべてまるごとド~ンと投げ出されたかのような印象です。20年代のパリの自由奔放な生活から、40年代日本の息苦しい抑圧された生活へ、すんなり移行して違和感なく見せられてしまったのも不思議です。フジタ役のオダギリさんのしなやかな演技が可能にしたマジックだったのでしょうか。
礼拝堂の壁画のキリストの生涯、とくに十字架上のキリストを囲む人々の静かな悲しみの表情がなんとともいえませんでしたね。なぜ洗礼を受けたのか、彼にとって信仰とは何だっ たのか、今となっては永遠のなぞですが、あの壁画ばフジタの絵の、というよりは彼の人生の集大成だったのだと思います。

以上、忘れないうちにと思い、勝手な感想を書き連ねました。
まだまだお忙しいと思いますが、ご無理のありませんように。お暇になったらぜひ。

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