小栗康平 手記

5月13日、カンヌにて

2005/05/14

公式上映は、現地時間13日、金曜日の夜7時半から。会場となったノガ・ヒルトンには一時間前から長い列が出来ていました。監督週間のディレクター、オリビエ・ペールさんとオフィシャル・セレクションのディレクター、ティエリー・フレモーさん、お二人が私たちを壇上で迎えてくれました。映画祭の関係者たちは、これは歴史的なことだと、興奮していました。会場は超満員です。
映画祭では、短い期間にたくさんの映画を見なければなりませんから、映画が始まってこれは違うと思うと、遠慮なくバタバタと出ていってしまう人たちが多いものですが、でも今日は違いました。最後までじつに静かに上映が進みました。タイトル・ロールが出ると、その瞬間から、いっせいに拍手が沸き起こって、スタンディング・オベーションになりました。ブラボーの声があちこちから聞こえます。うれしい瞬間でした。タイトル・ロールは約3分あるので、まだ上映が続いているうちに立ち上がっていいものかどうか迷いましたが、夏蓮といっしょに壇上に上がりました。長い、長い拍手がつづきました。上映は大成功でした。
控え室に戻ると、夏蓮がとつぜん大きな涙をこぼしてとまらなくなりました。14歳で初めて映画に主演し、カンヌでその成果を自分の目で確かめられたのですから、幸せだったと思います。祝杯をあげてホテルに戻ると、夜中の2時を過ぎていました。

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