著書

じっとしている唄

じっとしている唄

陶芸家の河井寛次郎が書いた『六十年前の今』という本に次のような一節がある。

形はじっとしてゐる唄、
飛んでいながらじっとしてゐる鳥、

河井が言う「形」とは、形をともなって「在る」ことを見せているいっさいの事物、ものそのもの、のことだろう。だから形あるものはすべからくその本然として「唄」を持っている、そう言っているように私には思える。(中略)
映画の「場」は虚構として設定されるものだけれど、「形」あるものの「じっとしている唄」を聴くためには「もの」がそもそもどこにあったかを考え、探っていかなくてはならない。
(本文より)
 
東日本大震災を経て最新作『FOUJITA』に至るまで、小栗監督が映像表現の可能性を探り続けた10年の思索をまとめた一冊です。

●単行本:
四六判、256ページ
●出版社:
白水社
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小栗康平著
「じっとしている唄」

時間をほどく

時間をほどく

私たちは、発展だとか成長だとか、社会も人生もなんらかのムーブメントでとらえがち。 映画でいえば、アクション場面そのものが見せ場になる映画も少なくない。 しかしそうだろうか。 私たちの私たちらしさは、そのように動くものでしかとらえられないのだろうか。
しみじみと感じる、深々と思うなどというときの状態は、どっかりと動かない自分があって、はじめてそういえる気がしないでもない。 自分らしさは、自分という井戸をのぞくようなものだとしたら、これは「動」ではない。
(本文より)
 
小栗監督が、映画を通して時代のありようを問う最新エッセイ集です。
「埋もれ木」の製作日誌、映像の現在を考える書き下ろしも収録。

●単行本:
254ページ
●出版社:
朝日新聞社
映画を見る眼

映画を見る眼

映像の文体を考え、映画世界への新たな接し方を探るプログラム、NHK教育の人間講座「映画を見る眼」。
本書は、小栗康平監督の考えるカメラ位置、場と光、せりふの間、ナラティブなど講座の解説テキストに、「デジタル技術と映画」という章を新たに書き下ろし、その他全体に加筆した単行本です。

●単行本:221P
●出版社:NHK出版

見ること、在ること

見ること、在ること

「死の棘」から「眠る男」まで、小栗康平監督のこの10年間に綴られたエッセイをまとめています。
「眠る男」の制作余談や映画論、風景・風土論など、自らの感性と存在を鋭く問い、10年の思索の跡をたどります。

●単行本:252P
●出版社:平凡社

哀切と痛切

哀切と痛切

「哀切であることは誰でも撮れる、それが痛切であるかどうかだよ、小栗」
浦山桐郎監督のこの言葉を肝に銘じて映画を撮ってきたという小栗康平監督が、「泥の河」から「伽倻子のために」までの30歳代を中心に綴られたエッセイをまとめた自分史です。

●単行本(ソフトカバー):193P
●出版社:平凡社