小栗康平 手記
西域
2007/09/14
列車と車で、ゴビからタクラマカンへと移動しました。同行のメンバーは途中から下痢に苦しんでいましたが、私はなにごともありませんでした。敦煌では、敦煌研究院のファン・ジンシ委員長とお目にかかり、日本語の堪能なベテラン研究員が莫高窟を案内してくれました。一日、五、六千人の観光客が訪れるとのことでしたが、どうしたわけかこの日はすいていて、じっくり見てまわることができました。傷みもひどくなっているようで、二年後には多くの窟が非公開になるとのことです。
さまよえる湖、楼蘭をはじめとして、二十代には西域の本を読み漁った記憶があります。じっさいにその地に立ってみると、物語としてロマンというよりは、もっと直截な生と死を強く感じました。あるいは、死を前提として人が為す、精神の営為、その残り方にこころ奪われたということでしょうか。
今週末からはウラジオストックです。また映画祭の審査です。