小栗康平 手記
つづき-2
2009/07/19
エレバンは街の建物が凝灰岩といわれるものでできています。火山の噴火でつくられた、やわらかな石らしく、88年の大地震後は、鉄筋コンクリートで建てて、いわば仕上げにこの石を使っている、とのことでした。色は薄い赤、というより赤紫でしょうか、ときどき黒いそれもあるのですが、おおむねは赤っぽい色です。朝、昼、夕方、そして暮れぎわと、光が変わっていくたびに、その薄い赤紫の色が、じつに微妙にその表情を変えていきます。パステルと水彩との中間のような、どっちにしてもやわらかな色調で、なんだかうっとりとしてしまいます。けばけばしい色は建物には見当たらず、街が同じ色合いで広かっているさまは、いいものですね。高い建物も出来てきてはいますが、どこでもこの化粧は忘れていないようで、まだまだ大丈夫、といった感じではあります。
映画祭のほうは、昨日、すべての審査も終わり閉幕しました。私が担当した長編部門では「THE OTHER BANK」というグルジアの映画がグランプリ、ゴールデン・アプリコットを受賞しました。ゲオルギー・オーバシビリという監督の、長編第一作の作品です。後日、詳しいことを書きたいと思っています。海外では、思いのほか時間がなくなってしまうものですね。なかなかパソコンを開けられません。明日は早朝に、グルジアへ移動します。グルジアはわずか三日間ですので、後は帰国してから、ですね。