小栗康平 手記

つづき

2009/07/17

あの後、一昨日はどの映画館でも、上映前に全員が起立して黙祷するようになりました。事故とはいえ、悲惨なことです。安全が脅かされる、おろそかにされる、といったことがあちこちで起きていはしないでしょうか。
コンペの作品は十二本。国際映画祭としては多いほうではありません。ただアルメニアやグルジアなどの国々の、新しい映画はこうした機会がないとなかなか見られませんから、いい勉強にはなります。アルメニア人は、世界中にじつにたくさん散らばっているのだそうです。これもジェノサイドがあったからではあるのですが。その散らばったアルメニア人がさまざまのところで活躍していて、この映画祭にも直接、間接に関わっています。そこがなかなか面白い。
審査員は私を入れて六名。表決が三対三になったときには、チアーマンである私がもう一票投票する権利をもつ、といったことになりそうです。しかしその私が外国語が駄目で、通訳を介しての議長でもあるわけで、これは容易ではありません。みんさんそれぞれの意見を強く持っている人たちばかり、なのですから。

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