小栗康平 手記
アルメニア
2009/07/15
モスクワ経由でアルメニアの首都、エレバンに入る。モスクワでの乗り継ぎが六時間。これが堪える。モスクワは夜九時になってもまだ日差しがあった。フライトはようやく日暮れた、夜の十一時十五分。飛行時間は三時間ほどだが、到着は現地時間、深夜の三時半である。到着前に健康チェックの用紙が配られたが、入国カードはもらえなかった。ビザを空港で取ることになっていたので、さてどうしたものかと不安になった。しかし、飛行機を降りると、私の名前を書いたボードを持って、空港の女の職員の人がすぐ目の前にいて、その人に連れられるまま、もう一度地上に戻って、歩いて建物に入る。そこで映画祭の人が待っていてくれた。手荷物のタグとパスポートを渡して、ビザの取得と荷物のピックアップをしてくれる。通常のイミグレーションは通らない。ありがたいけれど、なにやら旧ソ連ふうのやり方だなあと、思う。三年前、ウラジオストックの映画祭に呼ばれたときもそうだった。私は英語もほとんど駄目なので、いつも通訳の人にお世話になる。今回は五十歳を越える大ベテランのカリンさん。アルメニア人女性である。こんな時間なのにいっしょに出迎えてくれている。ありがたいことだ。
と、ここまで書いてネットを見たら、イランからアルメニアのエレバンに向かった飛行機が墜落、百何十人が絶望か、とある。そういうルートの選択もある、とも聞いていたので、その記事をそのエレバンで読んでいることに、自身で驚いている。心配してくれている人がいるといけないので、途中でこれをアップします。私は元気です。もう映画を六本見ています。時間がなくて、続きはまた。とりいそぎ。