事務局からのお知らせ

追悼・りりィさん
(小栗監督による追悼メッセージ)

2016/11/11

小栗康平監督の最新作「FOUJITA」で、おばあ役を演じられたりりィさんが11日午前、肺がんのためお亡くなりになりました。
小栗監督による追悼メッセージを掲載するとともに、心からご冥福をお祈りいたします。

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りりィさんへの追悼メッセージ

フジタが疎開した先の農家の「おばあ」という役柄を、りりィがやってくれた。おばあ、は愛称で、わりあい大きな農家の、寡婦である。芯がしっかりしているのは自然と向き合ってきたからで、気品もあって、生活者の見本のような女の人だ。長男はすでに戦争にとられていて、次男と二人暮らしである。この次男は加瀬亮さんにお願いして、こころよく受けてもらったのだけれど、「おばあ」が決まらない。いわゆる女優さんにはいないのだ。都市的な、キレイキレイな女の人が、ただ年老いたのでは「おばあ」にならない。キャスティングに窮していたところ、ある人がりりィを薦めてくれた。映画の人ではなくて、いまは小説を書いている方だ。えっ、りりィ?で、私は、りりィが役者をやっていることすら知らなかった。歌手のりりィの、面影はなんとかたどれる。もしかしたらいいかもしれない、瞬間にそう思った。何本かのビデオを見た。芝居は猛烈に下手だったけれど、もしかしたらと想像した通りに、人に、なんとも言えない味があって、いい。とてもいい。

会って話してみると、芝居は誰も教えてくれないので、と、チャーミングでもあった。上手い、下手は、映画では関係ない。問題は人間としての、存在感である。りりィの大ヒット曲「私は泣いています」以来、どんな私生活を過ごされてきたのか、私はなにも知らない。でも彼女の、私などには想像もつかない、固有な生き方、その日々が、深いところで彼女の揺るぎなさを生み出している、それがはっきりと感じられた。

撮影の現場は楽しかった。十三夜の話を中谷美紀さんが演じるフジタ夫人に語りかける場面がある。
「十五夜よりひと月、秋が進んだ分、きれいだよ、十三夜のお月様は」。せつせつと、たんたんと、そう言った。下手などころではない。大女優の貫禄である。撮り終えて、あたし、芝居のセリフが初めて言えた、そんな気がしてとても気持ちよかった、そう言っていた。この場面だけではない。実に見事な役者ぶりだった。

この先、もっともっといろんな映画で必要とされるりりィだと、強く思った。
それがなぜだ。こんなにも早くに逝かれてしまうとは。りりィの、固有の生き方の中に、避けがたい厳しい闇をかかえもっていたのだろうか。残念でならない。こころからご冥福を祈ります。

2016年11月11日
小栗康平

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