小栗康平 手記

仏像展

2006/09/29

特別展『仏像 一木にこめられた祈り』が十月三日から十二月三日まで上野の東京国立博物館で開催される。一本の木から彫りだされた仏像の、ほぼ初めてとなる大がかかりな展覧会で、奈良、平安から江戸時代までの傑作が全国から集められている。
主催者でもある読売新聞文化事業部の担当の方から、ここで『埋もれ木』を上映したという申し入れがあった。一木彫(いちぼくちょう)は、仏を作るというより、木から仏が顕現するのを待つような独自な彫刻で、その精神性は『埋もれ木』で描いた世界と重なると考えるから、というのが意図だった。私には意外な展開だった。
映画は映画興行という「場」で展開されるから、その「場」の常識、慣例、その「場」で通じる想像力で扱われ、見られてもしまうことが少なくない。もうそこには期待できるものがないのではないかと思えても、他の道がない。ああ、こういうこともあったのかと、私はこの誘いをうれしく思った。文化はさまざまな人間的営為が積み重なったものだ。映画を、具体的にそうした積み重ねの中に位置づける。これはこれまで考えられないことだった。
『埋もれ木』の上映は会期半ばの三日間だけになったけれど、35ミリの映写機を入れての、本格的な上映である。仏像展への入場者が『埋もれ木』をどう見てくれるのか、楽しみにしている。詳しくは昨日の読売新聞朝刊、あるいはホームページbutsuzo.jp/(現在は削除)へ。

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