小栗康平 手記

スイスの映画批評

2006/08/08

友人の友人がスイスで見つけた「埋もれ木」の批評を送ってくれました。スイスは人口の少ない国ですが、これまでも私の全作品を公開してくれています。ドイツ語から英語へ翻訳したものの和訳ですので、正確ではありませんが、以下、転載します。

奥深い映像の世界へととけ込む

山間の小さな町の高校に通う少女、まち。彼女は、どちらの方向へ進んだらいいのか分からぬ、不確かな年齢にさしかかっている。互いに物語を交換するという遊びに、友人と興じ始めた。
物語るということは、世界を作り上げていくことにほかならない。たしかに、物語は現実によりかかるところはあるが、その先の世界へと飛び出すのならば、よりかかっている現実から脱却し、あらたに独自の「現実」というものを創造しなくてはならない。日本人である小栗康平は、その新しい世界を開拓しうるイメージを持ち合わせている。

隠された木々という意味であろうか、『埋もれ木』は我々を巧妙 に仕立て上げられた映像への旅へと誘ってくれる。物語がどの現実を根拠としているのか、物語が語られているその立ち位置がどこなのか、が どんどん見えなくなっていく。

彼が与えたものは、我々の方に開放された一種の「未来物語」なのかもしれないが、多くのものが隠されたままになっている。映像というのは直接的に我々に語りかけてきて、言葉の論理には従わない、と小栗康平はいう。絵本を見たり、母親が語る物語を聞くことから、我々は世界を最初に経験する。母は私たちに最初に絵本を開いてくれたのだ。
完璧に構成された映像、はっと 息をのむような美しい光とそれによる影、そして隠れた詳細がつくりだ す、なんとも華やかな絵本である。
「埋もれ木」の見慣れぬ世界を見ることによって、我々はすっかり子供の視点を失ったのだと気がつく。この絵にふれて、世界の不思議をありのまま受入れるべきだと、小栗は我々に提起しているように私は思う。

Walter Ruggle

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