小栗康平 手記

四日市市での上映、始まる

2005/10/23

三重県鈴鹿市での上映は延長、延長でトータル10週間にもなりました。「埋もれ木」支援の会が広報、券売に奔走してくれて、地方都市としては異例のロングランでした。劇場はシネコンのワーナー・マイカル・鈴鹿ベルシティで、単館系の作品としては、ベルシティの興行動員記録を塗り替えました。
四日市市は鈴鹿市とさほど離れてはいませんが、四日市でもぜひにということになり、いわば仕切り直しで、「支援の会」がもう一度、動いてくださっています。四日市も劇場はシネコンの109シネマズです。「埋もれ木」は単館系といわれる独立館で、ていねいに育てあげていく上映が本来ですが、この両都市には町中の劇場がありません。シネコンも「ご当地」性の強い作品には例外的に1スクリーンは空けてくれるようで、こうしたことを契機に、シネコンも8つなり10あるスクリーンの一つ、二つは、地域事情にあわせて個別の選択が可能になり、すこしでも多様な映画が上映されることを望みたいものです。三重県ではこのあと、11月から伊勢の新富座での上映が始まります。この劇場はいったんは閉鎖された劇場ですが、さまざまな工夫をこらして、町中の映画館として再出発した劇場です。
四日市での初日のイベントとして昨日、四日市市長の井上哲夫さんと劇場で対談してきました。撮影に入る前に、儀礼的なご挨拶として役場にうかがったのが最初でしたが、なかなかユニークな市長さんです。前職は弁護士、国会議員でしたので、市長という行政職をやったことで、三権分立でいうところの三権にすべて携わってきたことになります。初対面のおり、そんな話が出て、私はつい軽口をたたいて、あとやってないのは塀の中だけですね、といったところ大笑いになり、それですっかり親しくなった方です。行政の前提として文化力といったことがどれほど大切か、よく分かっていらっしゃいます。

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